You've got another think coming

建設会社の総合サポート屋の考える事

人前で話す難しさと楽しさについて考えてみた。

4月に入り、年度も変わったことでパタパタと仕事に繋がれば良いなと淡い期待とドス黒い欲望をごちゃ混ぜにしながら、動いている。

そんな4月の中でメインイベントとも思える事案が講師を務めることであった。短い時間や長くても30分程度しか人前で話をしたことない僕に依頼は突然やってきたのであった。依頼をたどれば仕事の師匠に仕事を振ってもらったのだけれど、講師稼業はいずれやってみたいと思いつつで現実味はZERO。「人前で話すことは勉強になる。人に語ると自分も初心を思い出す」と師匠は優しく言ってくれたけど、講師初心者の僕は不安で上の空であった。

そんな初心者講師がセミナーするのは新入生研修と聞いて少しは誤魔化しが効くのではと思い、ほくそ笑んだけれど、何を話そうかと悩んでしまった。講師経験者にいろいろと話を聞いてみると、「経験談や失敗談なんか良いのでは」と。なるほど経験は勝手にしてるし、失敗談は限りなくある。8時間程度の講習でテーマも資料もある程度用意されてる状態であれば十分戦えるのではと思い始めてくる。YOUTUBEなんぞで講演している人やらコツやらも予習して完璧を自負して、当日を迎えたのであった。

当日、いざ紹介されて壇上に立つ段階で30人以上いる受講生の新入生の顔を見ると、若さからのキラキラや私たちの現場に対する不安を取り除いてくれ的な表情を見て、脳内がすべて白紙になる。

いざ自己紹介ではエ~を連発して噛みながらたどたどしく早口で自己紹介する自分がいた。与えられた時間は1コマ50分のなかで自己紹介でユーチューバーよろしく、10分は消費しちゃおう、下手したら時間たりなくなるぞなんて予習も空しく、時計を見ると1分程度しか針は進んでおらず、初手から絶望する。

1コマ目で何を喋ったかはよく覚えていない。ただ昼休憩に持ち込めたので、これで体制を立て直すと誓い、カツカレーを食べる。

カレーの効果は凄まじく、緊張はだいぶほぐれてきた。2コマ目からテーマに沿いながら経験談や失敗談を織り交ぜるスタイルを確立できたけど、あと6コマ持つのかと思いつつ一気に喋る。ふと気づいたのが新入生に希望を与える話をしなければならないのに、僕の話している内容がブラック業界部分にスポットを当てすぎなのではと思いライトな話をしようとしたらスベリまくった。

そんなこんなで勝手にこちらで混乱したけど何とか講師を務めることはできた。講義の最後は新入社員に求められものと言うものであった。僕は最後に「新入社員にそんなに求めてないから、ドンドン質問してドンドン失敗してください。皆さんも不安だけど、上司や先輩も新入社員の扱い方に不安なので。失敗しても素直に報告してね、隠すほうがリカバリーできないから」と。

新入社員の顔を見ると、いろんな表情があった。

確かに人前で話すことは自分にとっても勉強になった。素晴らしい経験になったし、また講演の機会があるなら、是非やってみたい。

講義の最後のあいさつで「何年かして皆さんが素晴らしい技術者になって現場で会えたら僕は嬉しいです。また会いましょう」と言ってすべての講義を終えた。

でも僕が心の中で思っていたことは「素晴らしくとも平凡でも技術者になって土木の面白さが分かってもらえればいい。それまで無事に生き残れよなと」。

僕もなんとか生き残ってみんなに現場で会ってみたい。