【人のいない繁華街に漂って】
世の中ではコロナウイルスによる影響や対策で絶賛大パニック中である。
夢や希望をもって例えば老後の楽しみとして、乗船したダイヤモンドプリンセス号の乗客にとっては青天の霹靂だろう。
テレワーク、在宅ワークが叫ばれる、今日この頃に僕はフェリーにのって岩手ドサワークツアーである。
結論から言ってしまえば仕事は順調であり、色々と心配していたことも、フェリーも、コロナも問題無く、青森で地酒と郷土料理を堪能したのであった。
強いて問題があるとしたら、体重増加による、不健康の加速である。
岩手ツアーの参加に若者は俯き、レジェンドチームと評されて、良い気分になったオジサンが行くことになった。
オジサン達のお楽しみはやはり、宿泊場所での郷土料理や地酒、プチ観光である。
アルハラなんて言い出さず、むしろアルハラされたいオジサンにとってはツアー中の唯一の楽しみでもある。
20年ぶりに訪れた弘前では、ホテルは仕事関係なのか盛況だが、とにかく街に人が少ない。
そんな中で嗅覚で選んだ店はなかなか良かった。
皆、それぞれにチェーン店とは一味違うとか、地元の料理は地元の居酒屋じゃないと堪能できないなどと、互いの嗅覚を褒め合い、貝味噌焼き、イカメンチを頬張り、地酒である豊盃を流し込んだ。
店長さんと少しお話ししてみると、コロナの影響は日を追うごとに大きくなっているとのこと。
飲食業に関しては、来店数もだけど、仕入れも不安定になり大変になってきていると。
オジサン達は店長に「店長が頑張って地元の味を守って」など励ます。
ふと同じ業種のオジサン達は建設業も人がメインだから、どれだけ影響がでてくるか分からないのが怖いと。
みんな経営者だったので、コロナを纏って不景気がくるなどの名言も出て、さながらATフィールド全開のエヴァンゲリオン初号機である。
酔ったオジサン達は「それでも頑張ってこの局面を乗り越えよう」、「明けない夜は無い」、「この店の様に地元に密着しつつ、新しい試みを恐れずやろう」などの勇ましい言葉が並んだ。
最後にこの店を選んだ様に嗅覚を信じようとオジサン達は結束して解散することにした。
会計を済まして出ようとすると、店長が奥から出てきて、「また来てください!チェーン店全店お待ちしています!」と信じられない発言が出た。
『某○○○チェーンだったのだ。』
しかも店長は聞くと佐賀出身で九州に転勤したいとのこと。
先程までの和気あいあい感から俺たち経営者の嗅覚って大丈夫なのかな、不景気に飲み込まれるかなと微妙な感じとなり、「チェーン店もやるもんだと」と誰か呟き無言での解散となった。